■老犬・痴呆犬の介護■
皆さん、こんにちは。AHTのニ宗 真生です。2003年の4月から12月までの9ヶ月間、飼い主様の家庭の事情により、当院で介護する事になった15歳の柴犬のゴンタ。私達はこのゴンタを通して「老犬・痴呆犬の介護・看護」に関して様々な事を学ばせてもらい、考えさせてもらいました。今回はその体験から学んだ事を基に、「老犬・痴呆犬の介護」についてお話したいと思います。 |
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■当初の様子■
2003年の4月10日にお母さんに連れられてきたゴンタは、目は白内障で耳は聴力をほとんど消失していました。名前を呼んでも無反応で、左後肢が脱臼しやすい状態のため、立たせてもすぐ転んでしまい、自分で歩くことは出来ませんでした。
水もご飯も視力がほとんど無いため残る嗅覚を使い、匂わせて食べさせようと、多くの犬が好むタイプの缶詰を与えましたが、自分では食べないため、強制給餌を
行うことになりました。
来てすぐのゴンタは便秘ぎみだったので、数日様子を見て浣腸を行うことも度々ありました。強制給餌は行っているものの、自分から食べようとすることはなく、あまり元気があるとは思えない状態だったので、17日間は毎日時間を決め、皮下からの補液を行いました。 |
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■症 状■
ここでまず「痴呆犬」に見られる異常行動のいくつかを紹介します。
1、飼い主、自分の名前、習慣行動が分らなくなり、何事にも無反応
2、夜中など、単調なよく通る声で鳴く
3、歩行はトボトボ。前にのみ円を描くように歩く
4、自分中心の旋回運動をする
5、狭い所に入りたがり、自分で後退できずに鳴く
6、部屋の直角コーナーでは方向転換できない
7、異常な食欲
8、よく寝てよく食べて、下痢もしないが痩せてくる
9、嗅覚のみが異常に敏感になっている(視力・聴力の低下の影響のためか)
10、昼夜が逆転し、夜中に動き回る
11、異常な姿勢で寝ていることがある
この他にも、まだまだあるかとは思いますが、ゴンタは以上の項目全ての行動を見ることができたので、痴呆犬として
扱うよう心がけました。
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■給 餌(何でも試してみることが大切)■
強制給餌を行う際には、その子に合った給与量を決め、誤嚥しないように注意します。その他、一度に与えると犬に負担がかかるため、回数を分けて与えると良いでしょう。
始めは思うように食べてくれませんし、すごく時間がかかりますが、焦らず愛情を持って頑張ってください。
約1ヶ月が過ぎ、強制給餌にスタッフもゴンタも慣れてきたお陰か、だんだんゴンタの食欲が出てきた頃、スタッフの一人が
痴呆用のフードを与える事を試みてみると、今までと違い「もっとちょうだい」と言わんばかりの食欲を示し、
お皿から自分で食べてくれるようになりました。
その後ゴンタは、自分でドライフードを食べ、水を飲むようになり、嫌いなフードは口から出すようなワガママぶりも発揮するようになりました。私達もゴンタが好きなフードを知り、ゴンタが食べやすい体勢、食べたいタイミングを考え、
日を追うごとにゴンタの要求が少しずつ分るようになってきました。 |
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■体重管理(変動を把握することが大切)■
強制給餌を確実に行っているつもりでも、体重が減ってはいけません。給与量に問題がないか、ちゃんと食べさせてあげられているのかを確認してみて下さい。確実に与えているのに体重が減少しているようであれば、給与量を少し増やしてみても良いでしょう。また、このように早期で発見するためにも、定期的な体重測定をおすすめします。 |
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■排便・排尿(毎日の観察が大切)■
上の「体重管理」にも関係があるのですが、便・尿が出ているかも知らなければなりません。きちんと給餌されていても、便が出てないのに体重は増えてないという場合は、便が出ると体重がかなり減ってしまうかもしれません。毎日の便・尿の回数や量を把握し、状態を見る事が大切です。
排泄のさせ方ですが、ゴンタの場合は起き出し、旋回行動をし、その後鳴いて教えてくれたので、そのたびに外に散歩に連れて行くようにしていました。
この行為が出来る事に、痴呆ではないと思われるかもしれませんが、これは自分の巣を外敵に知られないための動物の本能によるものだと聞きました。
寝たきりの子の排泄は本当に大変だとは思いますが、多くの方の場合、ペットシーツを利用し、それをこまめに交換してあげているようです。
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■散 歩(定期的な運動も大切)■
毎日の定期的な散歩はとても大切です。距離は短く、回数を増やしてください。今まで外で排泄をしていた子なら、その時にしてくれると思います。また、ずっと寝ているとどんどん筋力は衰えてしまいますし、外に出ることで日光浴にもなります。
ゴンタは肢が悪かったため、転んでしまわないよう私達が支えながらゴンタのペースに合わせて歩きました。便を
する時にも力を入れすぎて転んでしまうため、注意して支えていました。夏場は日陰を選んで行くように心がけ、雨の日は
ビニール袋で即席のカッパを作り、平均一日6回ほど散歩に連れて行きました。 |
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■睡 眠(床ずれの防止を)■
老犬・痴呆犬はとても深い眠りにつき、食餌と排泄の時以外はほとんど寝ています。ゴンタは視力・聴力をほとんど消失していたため、大きな物音がしても全く起きることはありませんでした。
寝る時の環境ですが床ずれが問題になるため、下に敷く物を何枚か重ねたり、クッションを置くなどの工夫をしてあげて下さい。
横になる向きを定期的に変えてあげると良いでしょう。 |
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■手入れ(沐浴のすすめ)■
シャンプーは控えた方がよい子の場合、沐浴(もくよく)をおすすめします。もちろん、シャンプーで洗う程綺麗にはなりませんが、臭いも汚れも気持ちも落ち着きます。
沐浴の仕方は、たらいにお湯を張り、そこにキャップ1杯ほどの少量のシャンプーを入れます。そこに浸したタオルを絞って、体全体を隅々まで拭いてゆきます。
その他、ブラッシングや耳掃除、爪切りなど、その子が少しでも気持ち良く過ごせるように手入れを行います。
寝ている時に手早くすると大人しく、興奮することなくさせてくれると思います。動物にとっても負担が少ないです。 |
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■最後に■
ゴンタの介護の真っ最中に、看護士を対象とした痴呆犬についての勉強会で講師の先生が、「痴呆犬の表情はなぜかよく似ていて、いい顔をしています。」と話された後、見せてもらった映像の子の表情とゴンタの表情が本当によく似ていたのが忘れられません。
老犬の介護は、その子を知る事から始まります。どのような所に注意しなければいけないか、どのようにしてあげれば、その子が楽になるか、視力、聴力を消失している子にはどのように触れてあげなければならないか等、接していく上で色々なことを考えます。
今まで食べてくれなかったのにフードを変えたり、工夫したことで自分から食べだしてくれる喜び、立つこともままならなかったのに歩き回ってどんどん歩く距離が伸びる喜び、私達はゴンタの介護をしながらもゴンタの素直さにとても癒されました。介護をする上で一番大切なのは、愛情を持って接していくことだと思います。
ゴンタの介護の経験は今現在も看護の様々な場面で役立っています。
介護中、ゴンタの体調を気遣い、私達を励ましてくださった多くの方々に感謝しています。自分の愛犬が歳をとり、「介護」する事になった時、少しでも参考にしていただけると嬉しく思います。 |